『その男、凶暴につき』は、1989年8月12日に公開された北野武(ビートたけし)の映画初監督作です。暴力で捜査を進める刑事・我妻が、麻薬組織との戦いの果てにどんな結末を迎えるのか、気になって検索された方も多いのではないでしょうか。
この記事では、あらすじを結末まで時系列で整理し、「誰が誰を撃つのか」「ラストで我妻はなぜ灯を撃ったのか」まで解説します。
※この記事は結末までのネタバレを含みます。まだ観ていない方はご注意ください。
- 我妻は、麻薬組織の黒幕・仁藤と、殺し屋・清弘を射殺します。
- 薬物中毒になった妹の灯を、我妻は自分の手で撃ちます。
- その直後、我妻は仁藤の部下・新開に撃たれて死亡します。
- 組織は新開が引き継ぎ、刑事の菊地が、殺された岩城の代わりに立てられます。
編集部としては、悪を倒しても誰も救われないという終わり方が、この作品の余韻の正体だと考えます。
『その男、凶暴につき』の作品情報と登場人物
まずは作品の基本情報を整理します。本作は、企画から公開までに大きな方向転換があった作品でもあります(詳しくは後半の「見どころと制作の裏側」でご紹介します)。
| 公開日 | 1989年8月12日 |
|---|---|
| 監督 | 北野武(ビートたけし)。映画初監督作 |
| 脚本 | 野沢尚 |
| 製作 | 奥山和由 |
| 撮影 | 佐々木原保志 |
| 音楽 | 久米大作 |
| 主演 | ビートたけし(我妻諒介 役) |
| 上映時間 | 103分 |
| 配給 | 松竹富士 |
| 配給収入 | 5億円 |
出典: Wikipedia『その男、凶暴につき』、映画.com 作品情報(2026年10月時点で確認)
主な登場人物とキャスト
| 役名 | 俳優 | 立ち位置 |
|---|---|---|
| 我妻諒介 | ビートたけし | 主人公。暴力で捜査を進める刑事 |
| 菊地 | 芦川誠 | 我妻の相棒を務める新人刑事 |
| 灯(あかり) | 川上麻衣子 | 我妻の妹。精神的な病を抱えている |
| 岩城 | 平泉成 | 防犯課の係長。我妻と親しい同僚 |
| 吉成 | 佐野史郎 | 署長。我妻の暴力的な捜査を問題視する |
| 仁藤 | 岸部一徳 | 実業家で、麻薬組織の黒幕 |
| 清弘 | 白竜 | 仁藤に雇われた殺し屋 |
| 新開 | 吉澤健 | 仁藤の部下(秘書) |
| 柄本 | 遠藤憲一 | 麻薬の売人。物語の発端で殺される |
ここで注意したいのが、署長の「吉成」と、仁藤の部下の「新開」は別人だという点です。名前が似ているので、あらすじを読んでいて混乱しやすいところです。
人物関係を一目で
- 我妻の側: 菊地(相棒の新人刑事)、灯(妹)、岩城(親しい同僚)
- 敵の側: 仁藤(黒幕)、清弘(殺し屋)、新開(仁藤の部下)
- 署内: 吉成署長(我妻の暴力を問題視する立場)
『その男、凶暴につき』のあらすじ(結末前まで)
ここからは物語の流れを「起・承・転」に分けて整理します。結末は次の章でまとめます。
起|暴力で捜査を進める刑事・我妻
刑事の我妻は、犯罪者に容赦なく暴力を振るう捜査スタイルのせいで、署内でも危険視されています。冒頭では、浮浪者を襲った少年の自宅に押し入り、殴る蹴るの暴行を加えて自白させる場面が描かれ、署長の吉成から注意を受けます。
一方で我妻は、精神的な病を抱える妹の灯を大切にしており、若い刑事の菊地など数少ない同僚と酒を飲む一面も持っています。
承|麻薬売人の殺害と、岩城の死
港で麻薬の売人・柄本の死体が見つかり、我妻は菊地とともに捜査を始めます。売人の常連客に暴力を振るって情報を聞き出す我妻を、菊地は止められません。
捜査を進めるうちに、親しい同僚の岩城が麻薬を横流ししているという情報にたどり着きます。ところがその直後、岩城は首を吊った状態で発見されます。口封じのため、麻薬組織に殺されたとされています。
転|清弘の逮捕、辞職、そして灯の拉致
我妻は黒幕の仁藤と殺し屋の清弘にたどり着き、清弘を覚せい剤取締法違反で逮捕します。そして怒りにまかせて激しい暴力で尋問し、最後には銃まで向けます。菊地らに止められますが、この行き過ぎた捜査が問題になり、我妻は刑事を辞めることになります。
そのころ、清弘の一味は我妻の妹・灯を拉致し、薬物を打って暴行を加えていました。ここから物語は、我妻の復讐へと一気に動き出します。
『その男、凶暴につき』の結末ネタバレ|誰が誰を撃つのかを時系列で解説
ここからが結末です。ラストは登場人物が次々に撃たれる展開なので、時系列の表で整理します。
なお、結末の描写は、映画.comの作品紹介を含む複数のあらすじ解説を突き合わせて整理しました(2026年10月18日に編集部が確認)。
ラストまでの流れ(時系列)
| 順番 | 誰が・誰を | 何が起きるか |
|---|---|---|
| 1 | 我妻 → 仁藤 | 刑事でなくなった我妻は拳銃を手に入れ、仁藤のビルに乗り込みます。シラを切り続ける仁藤を射殺します。 |
| 2 | 清弘の一味 | 仁藤の死を受けて、清弘の側で仲間割れが起こり、手下同士の撃ち合いになります。 |
| 3 | 我妻 ⇄ 清弘 | 我妻が現れ、清弘と激しい銃撃戦になります。最後は我妻が清弘を射殺します。 |
| 4 | 我妻 → 灯 | 薬物中毒になった灯が現れ、清弘の遺体から薬を探そうとします。変わり果てた妹の姿を見た我妻は、灯を射殺します。 |
| 5 | 新開 → 我妻 | 何事もなかったように立ち去ろうとする我妻を、仁藤の部下・新開が背後から撃ち、我妻は死亡します。 |
| 6 | (その後) | 新開が仁藤の跡を継ぎ、麻薬の密売を続けます。殺された岩城の代わりに、菊地が立てられます。 |
最後に我妻を撃ったのは誰か
我妻を撃つのは、仁藤の部下の新開(吉澤健)です。署長の吉成でも、相棒の菊地でもありません。登場人物の名前が似ているため、人物を取り違えた記述もネット上では見かけますが、映画.comの作品紹介や複数のあらすじでは、新開が我妻を撃つとされています。
そして菊地は、我妻を撃った側ではなく、組織に「岩城の代わり」として取り込まれる側です。この点は、次の章で詳しく見ていきます。
『その男、凶暴につき』のラストの意味は?灯を撃った理由と菊地・新開のその後
ここからは、結末の場面をどう読めるかを整理します。劇中で説明されていない部分は、あくまで編集部の読み方であることをご了承ください。
我妻はなぜ灯を撃ったのか
事実として描かれているのは、薬物漬けにされた灯が、清弘の遺体にすがりついて薬を探している姿を、我妻が目にするところまでです。そのあと我妻は感情をこらえ、灯を撃ちます。
なお、脚本を書いた野沢尚は、クライマックスでの妹の銃殺場面を高く評価していたと伝えられています。

菊地の変貌が示すもの
菊地は物語の序盤、我妻の暴力的な捜査を止めようとする側の新人刑事でした。ところがラストでは、新開によって、殺された岩城の代わりに立てられます。解説によっては「菊地は組織に寝返っていた」と整理されていますが、劇中で寝返りの経緯が細かく描かれるわけではありません。
編集部としては、我妻が死んでも麻薬の売買と汚職は終わらず、次の世代に引き継がれていくことを示す結末だと読むのが自然だと考えます。「その男」の暴力が、悪を断つどころか、新しい形で連鎖していくように見えるからです。
岩城はなぜ汚職に手を染めたのか
岩城が麻薬の横流しに関わっていた理由は、劇中ではっきり説明されません。岩城の妻が、数日前から夫が帰らないと我妻に尋ねる場面は描かれますが、動機そのものは観る人の想像にゆだねられています。
『その男、凶暴につき』の見どころと制作の裏側
深作欣二の降板から、北野武の初監督へ
本作は、もともとは深作欣二が監督する予定で企画が進んでいました。脚本は野沢尚で、ビートたけしが出演する形でした。しかし、撮影の進め方やスケジュールの面で折り合いがつかず、深作は監督を降りたとされています。プロデューサーの奥山和由は、深作がテストを何度も繰り返す方式を取り、たけしは一発撮りを求めたため対立した、と述べています。
そこで奥山がたけしに監督を依頼し、たけしは「脚本の書き直し」を条件に引き受けました。つまり、北野武は監督になる予定がなかったところから、偶然に近い形で初監督を務めることになったわけです。
書き直しによって内容が大きく変わったことに、脚本の野沢尚は不満を持ったとされています。2004年には、変更前のオリジナル脚本をもとにした小説『烈火の月』を出版しています。
本物志向の暴力描写
本作の演出の特徴としてよく挙げられるのが、暴力描写のリアルさです。通常の映画では「殴ったふり」で撮るところを本気の平手打ちで撮る、役者が本当に階段を転げ落ちるなど、ホンモノ志向が貫かれていると紹介されています。
宣伝では「子供には見せるな」という趣旨のキャッチコピーが使われていたとされています。
ちなみに『その男、凶暴につき』という題名は、ジェイムズ・ハドリー・チェイスの小説『その男 凶暴につき』から流用したものです。映画はその小説の映画化ではありません。
『その男、凶暴につき』の評価・口コミ
公開当時から高く評価された作品で、主な受賞歴は次のとおりです。
- 第11回ヨコハマ映画祭: 監督賞、日本映画ベストテン第2位
- 第63回キネマ旬報ベスト・テン: 日本映画第8位
- 第13回日本アカデミー賞: 優秀主演男優賞(ビートたけし。映画.com掲載の受賞歴)
映画関係者の評価も知られています。淀川長治はカメラワークにジュールス・ダッシン作品を感じたとし、深作欣二は「面白かった」と感想を述べました。春日太一は、日本映画にありがちな叙情性を排した冷たいタッチと、剥き出しの暴力性を評価しています。(出典: Wikipedia)
観客の評価点は、2026年10月18日時点で、映画.comが平均3.8(56件)、Filmarksが3.9(347件)でした。レビューでは、暴力の質感やセリフで説明しすぎない演出を評価する声が目立ちます。一方で、暴力や凌辱の描写が重く、好みが分かれるという声もあります。
『その男、凶暴につき』を観る前に知っておきたいこと
本作には、暴力に加えて、薬物や性的暴行を思わせる描写があります。苦手な方は、この記事であらすじを把握してから鑑賞を判断するのも一つの方法です。
- 北野武監督作を初めて観る方: 本作は監督デビュー作です。会話や説明が少ない作風なので、この記事のあらすじを頭に入れてから観ると、場面のつながりを追いやすくなります。
- 暴力描写が苦手な方: 灯の場面を含め、重い描写があります。まずはこの記事で結末までを把握して、観るかどうかを決めるのも一つの方法です。
- すでに観た方: 「ラストの意味は?」の章で、灯と菊地の場面の読み方を整理しています。解釈は人それぞれなので、ご自身の印象と見比べてみてください。
「結末はわかったので、実際に観てみたい」という方は、視聴方法をまとめた記事も参考にしてください。配信状況は変わることがあるため、最新の情報は配信記事で確認いただくのが確実です。


北野武監督のヤクザ映画の結末が気になる方には、『アウトレイジ』のネタバレ解説もあります。


『その男、凶暴につき』のよくある質問
- 『その男、凶暴につき』のラストはどうなりますか?
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我妻は仁藤と清弘を射殺し、薬物中毒になった妹の灯も自分の手で撃ちます。その直後、仁藤の部下・新開に撃たれて死亡します。組織は新開が引き継ぎ、菊地が岩城の代わりに立てられます。
- 我妻を撃ったのは誰ですか?
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仁藤の部下の新開(吉澤健)です。署長の吉成(佐野史郎)や相棒の菊地(芦川誠)ではありません。
- 『その男、凶暴につき』のヒロインは誰ですか?
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物語の鍵を握る女性は、我妻の妹・灯です。演じているのは川上麻衣子です。恋愛的なヒロインというより、我妻が復讐に向かう動機を担う存在として描かれています。
- 『その男、凶暴につき』に原作はありますか?
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小説の映画化ではありません。題名はジェイムズ・ハドリー・チェイスの小説『その男 凶暴につき』から流用したもので、企画は佐木隆三のノンフィクション小説『旅人たちの南十字星』から始まりましたが、映画の内容は大幅に変更されています。
- 『その男、凶暴につき』は北野武の初監督作品ですか?
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はい、1989年公開の本作が北野武の映画初監督作です。当初は深作欣二が監督する予定でしたが、降板したため、たけしが監督を務めることになりました。
※本記事の作品情報・評価点は2026年10月時点で確認した内容です。口コミや評価点は変動する場合があります。






